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2代目正澄の萩原厚さん(右)と3代目の貢さんの工房=2024年4月9日午後3時4分、静岡県焼津市東小川5丁目、本間久志撮影
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 日本古来の武道としていまに伝わる弓道。静岡県中部の志太地域には古くから道具づくりの伝統が息づき、中でも同県焼津市で生み出される作品は「焼津弓道具」と呼ばれる。そこには先代から技を受け継ぎ、家業に打ち込む匠(たくみ)たちの姿があった。(本間久志)

 わらでいぶした鹿革の香りが漂う自宅隣の工房で、職人親子が裁断した革を手に取り、一針一針丹精込めて縫い合わせていく。くりぬいた木型で親指部分をつくり、立体的に仕上げていった。弓を引くときに右手につける手袋の「弽(ゆがけ)」だ。

 弽は「かけがえのない」という言い回しの由来とも言われるほど弓道家は重視する。現代の弓道では、親指と人さし指、中指の3本か、それに薬指を加えた4本を覆う形が主流になっている。焼津市東小川5丁目の萩原厚さん(82)、貢さん(53)は「正澄(まさずみ)」の銘で全国各地の高段者が愛用することで知られる弽を製作する「弽(かけ)師(し)」親子だ。

 初代の直吉さんは東京出身で…

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